悲しみを尊い愛と友情に変えた奇跡の物語 ミュージカル『カム フロム アウェイ』稽古場披露レポート!

数々の演劇賞を受賞したブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』が3月7日~29日、日比谷の日生劇場60周年イヤーの締めくくりを飾って上演される(のち、4月4日~14日大阪・SkyシアターMBS、4月19日~21日愛知・愛知県芸術劇場 大ホール、4月26日~28日久留米シティプラザ ザ・グランドホール、5月3日~4日熊本・熊本城ホール メインホール、5月11日~12日群馬・高崎芸術劇場 大劇場で上演)。

トニー賞、ローレンス・オリヴィエ賞、ニューヨーク・タイムズ紙の批評家賞をはじめ、数々の演劇賞を受賞したこの作品は、2001年9月11日、ハイジャックされた旅客機がマンハッタンのワールドトレードセンターに激突したのをはじめ、アメリカ合衆国で起き、世界を震撼させた同時多発テロの裏で、カナダにある小さな町・ニューファンドランド島のガンダーで実際に起こった奇跡のような5日間を基に描いたミュージカルだ。

舞台に登場する12人のキャストが100人近くの役を次々に演じ、人種、国、宗教を越えて生まれたドラマが交錯して描かれていく、休憩なしノンストップ100分間の舞台となっている。

そんな作品の日本初演を担ったのは、安蘭けい石川禅浦井健治加藤和樹咲妃みゆシルビア・グラブ田代万里生橋本さとし濱田めぐみ森公美子柚希礼音吉原光夫(五十音順)という、それぞれが看板を張れるミュージカル界の大スターたち。よくぞ集めたなと感嘆するしかない12人に加えて、スタンバイキャストの上條駿栗山絵美湊陽奈安福毅の4人もミュージカルの舞台でお馴染みの実力派たちだ。そんな面々が新たな舞台を創り続ける都内稽古場の様子が13日公開され、濃密な舞台の一端が披露された。

広い稽古場の中央に設営された舞台面には、椅子やテーブルを中心とした出道具が並び、多くの番号が振られているのが目に入る。その数字の羅列に注目している間にも、男性キャストたちが、各々のウォーミングアップを続けている(と言ってもタップダンスの練習をしている!?と思わせたほどに足を踏み鳴らし続けている加藤和樹もいれば、ふら~っと舞台面を歩いている石川禅や、吉原光夫もいて過ごし方は様々だ)。一方女性キャストは、舞台面向かって下手側に用意されたそれぞれの控えの椅子周りで、和やかに会話を弾ませている。多くの記者たちが詰めかけているのを特段意識した様子もない自然体の雰囲気に、こちらの緊張も(稽古場取材というのは、非常に近距離で行われるので音を立てないように、とか、なるべく集中の妨げにならないようになど、取材側も少なからず固くなるものなので)自然にほどけていく気持ちがした。

そんな時間のあと、いよいよ場面披露かと思ったのも束の間、最初の披露楽曲予定の「Welcome To The Rock (ザ・ロックへようこそ)」を使ってウォームアップをしましょう、と声がかかり、キャストたちが各々動きながら歌い始めるというサプライズが。こうした時に、MAXではないながらかなりの本気で動きや歌に取り組むキャストと、声は張らずに流しながらその場にいるキャストがハッキリ分かれるのも面白く、スター揃いの稽古場にさらに自由な個性が横溢するようだ。スタンバイキャストの面々も自由にその場で歌い、動いているのが目に楽しい。

そこからいったんキャストたちがハケて、今日の公開稽古進行、また作品そのものを紹介する演出捕のダニエル・コールドスタインが登場すると、キャストたちから大きな歓声と拍手が沸き起こり、チームの良い空気感が広がるなか、ダニエルの挨拶がはじまった。

ダニエル「(日本語で)ミナサン、オハヨウゴザイマス。こうしてまた来日することができて、日本のキャストと『カム フロム アウェイ』をご一緒することができてとても嬉しいです。2017年のブロードウエィでのオープニングと共に僕はこの作品をずっとやってきました。とても大事な作品です。『カム フロム アウェイ』は実際にあったことを描いた物語で、登場人物も全て実在する人々です。僕も実際に彼ら全員と会ったことがあります。作家たちがニューファンドランド島に出向いて、彼らから直接取材し、たくさんの方にインタビューをして仲良くなり、家に泊めてもらって様々なストーリーを教えていただいたそうです。

これは困難な時にこそ人に優しく、寛容に接するということを語る物語です。昨今のアメリカ、カナダ、そして日本もそうですが、大変な時にこそお互いに優しくするということはとても大事なことなのではないかと思います。ホリプロさんがこの作品を上演することを選んでくださったことに本当に感謝しています。僕たちはこの作品が大好きです。是非皆さんにも大好きになっていただきたいです。

こんなに素晴らしいキャストとご一緒できて光栄に思っています。それぞれミュージカル界ではスーパースターの皆さんですけれども、このアンサンブル作品でご一緒していただけるのは、この作品の素晴らしさがあるからこそだと思います。そして一人ひとりと本当に楽しくご一緒させていただいております。これはノンストップ1時間40分で上演される作品です。そして役者は様々な役を演じ、お客様に物語を語っていきます。なので、もし役者の方と目が合ったとしたら、本当にそういうことなんです。お客様と実際につながって物語を伝えてくれと私たちは話していますので、どうぞびっくりされないでください。

 ニューファンドランド島のことをこの作品以前に聞いたことがあります、という方は手を挙げてくださいますか?(挙手がほぼないので「OK説明しましょう!」という流れで)カナダの北東の方にあるとても小さな島です。過去に大西洋でヨーロッパからアメリカに飛ぶ時に、給油に使用するガンダー国際空港があることで有名でした。その為に小さい島である割りにはとても大きな空港があったのです。今となっては東京からニューヨークも直行できるようになりましたから、ガンダーに立ち寄ることもなくなりました。でも2001年9月11日、いきなり目的地に降りられなくなった飛行機が(※同時多発テロ勃発によって、アメリカ合衆国の領空が一斉に閉鎖された為)、着陸する為の好スポットとしてガンダーが注目されました。というところからこの物語がはじまるわけです。

そして、オンステージにはミュージシャンもいます。ドラムの方だけは音がうるさすぎるので(笑)袖にいていただきますが、そのミュージシャンも役者と交流があります。本当に日本で観たことがないようなミュージカルになるのではないかなと思っています。

 という訳でこの作品のオープニングナンバー「Welcome To The Rock (ザ・ロックへようこそ)」をお楽しみください」

稽古披露 楽曲 M1「Welcome To The Rock (ザ・ロックへようこそ)」

 作品の開幕を担うナンバー 「Welcome To The Rock」がはじまる。ニューファンドランド島ガンダーの人々が、「遠くから来たお客様」=「観客」=「カムフロムアウェイズ」を、島の人々が歓迎する様子と共に、島の暮らしやそれぞれの仕事などが語られていく。所謂状況説明のナレーションの台詞もあれば、島の人々としての台詞もあり、キャスト全員が歌い踊る様がなんともパワフル。非常に短い小節でメロディーが次々に歌い継がれていくので、これは誰に注目するかによって、全く新しい見え方があったり、発見のある舞台だろうと、まず構成の面白さがストレートに伝わってくる。リズムのアクセントに合わせて全員が足を「ドン!」と踏み込む音がまるで打楽器のようで、1度曲が銘々のペースで進められていただけに、全員が息を合わせた迫力に圧倒される、勢いあるオープニングだった。

 本来ノンストップの舞台なので、「はい、そこまで」と声がかかって、ふわっと場がほどけたあと「どうしよう、間違えちゃった!もう一度やっちゃダメ?」と森公美子が言い出し、「大丈夫、大丈夫」とキャストたちが話す声も賑やかななか、そのままいまの場面についてダニエルがサジェッションをはじめると、一気に場が引き締まる。

 「みなさん素晴らしい!芝居が上手すぎます!」という賛辞のあと「ナレーションから芝居に入っていくところで勢いをください」「もう少し誇り高く、私は負けないという意識で」「ラジオをつけるところはしっかりと」「ちょっと怒っていますよね」等々、細かい指摘に、作品に長く携わっている人の視線の確かさが感じられる。キャストも時に爆笑したり、拍手もしながら、誰に対する指摘であっても、自分のこととして真剣に耳を傾けている姿が印象的だ。

 続いて振付捕のジェーン・バンティングが進み出て動きをチェックしていくが、まず「いま皆さん的にはいい感じかしら?上手くいったと思っていただきたいです」と、その場でたまたま起きた小さなミスなどは全くノープロブレムだと伝える様が、キャストのモチベーションをあげる素敵な言葉だなと感じる。

そこから「三つだけとても細かいことを申し上げます」と、「ちょっと手が開いている人がいるので、しっかり握りましょう」などの本当に細かい指摘が。この場面のなかでは長い台詞があるシルビア・グラブの、その台詞をきっかけに、ひとつブレスをいれることも「みなさんでやってみましょう」と、誰かに対してではなく、常に全員でブラッシュアップすべき点を共有していこうとする姿勢が心地良い空気につながっていく。音無しで一度、音と共にもう一度と小返しされる度に、意図がどんどん明確になっていくのに目を奪われているなか、2曲目の楽曲披露がはじまった。

稽古披露 楽曲 M10「Screech In(ラム酒を飲め)」

ダニエル「次にお見せするシーンは“Screech In“と呼ばれている場面です。スクリーチとは日本語でラム酒のことで、とても甘くてお酒の度数も高いです。ニューファンドランド島では地元の人ではない人を「カム フロム アウェイズ」と呼びます。つまり遠くから来た人=カム フロム アウェイズということなのです。ニューファンドランド島に来て、名誉ニューファンドランド市民になりたい場合は“Screech In“という儀式を行います。この時には人口9.000人ほどの小さな街に、いきなり7.000人もの色々な国の人がやってきて、人口が跳ね上がったわけです。そこから数日経ったところで、地元の人たちがそのカム フロム アウェイズの為にバーで、皆で集まって酔っぱらって、“Screech In“をやろうじゃないかということになります。

皆さん既にご存じでしょうが、橋本さとしさんが演じているのが、ガンダーの町長クロード・エリオットという方です。実際にクロード・エリオットさんから僕はカンガルーをいただきました(笑)。そのクロードさんが主に“Screech In“の儀式を務めています。何段階かに分かれているセレモニーですが、全てかなりふざけています。とても固いパンを食べなければいけなかったり、缶詰のなかのへんてこなソーセージを食べなければいけなかったり、魚とキスしなければいけなかったり、そしてスクリーチを飲まなければいけません。最終的には僕も名誉市民の証書をいただきました。そういうセレモニーのシーンをこれからご覧いただきますが、セレモニーと言うよりはパーティだと思っていただきたいです。

物語のなかで安蘭けいさんが演じているテキサス出身の女性のダイアンと、石川禅さんが演じているロンドン出身の男性のニックがいまして、この場面は開幕から1時間程度のところなのですが、二人はちょっといい感じになっています。また、浦井健治さんが演じているケビンJと、田代万里生さんが演じているケビンTはロサンゼルスから来たカップルです。このカップルに関しては、現状に対する気持ちが全く違います。健治さんの方はニューファンドランド島に対して温かい気持ち、良い気持ちを持っているのに対して、万里生さんが演じている役柄はいまの事態に恐れおののいていて、あまり居心地が良くないという状態です。

このシーンの最中には舞台上にミュージシャンも出ます。実際の舞台ではドラマー以外の全員が登場します。バンドにも振付がついている『カム フロム アゥエイ』は前代未聞の展開が多い作品です。以上を知っていていただければ大丈夫だと思います。皆様お楽しみください」

そこから、キャストたちが“Screech In“の場面に入っていくために、椅子やテーブルを転換していく。「いまのキャストの様子もみてくださいね、セットを動かす番号を覚えるのも仕事なんです!」と森がアピールしてくれて、あー膨大な番号の秘密はこれか!12人で100人も演じ分けながら、何番に何を動かす、と一つひとつ覚えるってやっぱり俳優たちの記憶力は半端じゃないな…と思っていると、町長役の橋本を中心にした賑やかな場面がはじまった。

この物語のなかでガンダーを訪れている人々は、ここに観光に来た訳ではない。何年経っても思い出したくないあの同時多発テロの光景が、テレビではひっきりなしに流れていた。そこに巻き込まれている人たちが、心身ともに疲弊しているのは明らかで、そんな彼らを島の人たちがバーに集めて、歌い踊り、ハメをはずしながら楽しいひと時を過ごす。実はこの曲の間にも、俳優たちの役柄はいくつも入れ替わっているそうで、その全ては衣装や小道具が揃う舞台でこそきっと味わえると思うが、この事態がなかったら出会うことも決してなかった安蘭けいと石川禅、どんな役を演じても「これこそ当たり役だ!」と思わせる演技巧者の二人が繰り広げる交流が微笑ましいし、稽古の切れ目やウォーミングアップ中は常に控え目で、キャストの一番後ろにいた浦井健治が、場面のなかで発揮するエネルギーや、明らかに回りに距離を置いている田代万里生が見せる憂いある横顔が、このところ色濃い役柄が多かっただけに、久々に王道の田代を見る思いがする。そこにパワー全開で動く加藤和樹の勢いも健在で、全員の台詞を覚えてしまうことで有名な加藤が、この作品でもその異能を発揮しているのかちょっと訊いてみたい気持ちになる。どこかで土の香りを感じさせる濱田めぐみのパッショネイト。一癖あるからこそ奥深い吉原光夫。可愛い笑顔と凛として斬りこんでくる動きの鋭さのギャップが目を引く咲妃みゆ。大陸的と言いたいほどのおおらかさを発揮する柚希礼音。何をしていてもパワフルなシルビア・グラブ。そしてそんなはずはないのに、その場の空気のなかで動いているように感じさせる橋本さとしと森公美子の自在さ。と、これだけのスターを揃えたのだから当たり前だと言われてしまえばそれまでだが、もうとにかく目も耳も忙しくて幸せ!という、悲劇からの出会いを幸運に変えようとする人々が展開する、温かくも賑やかなシーンが過ぎていった。

「終わった、終わった!」と場面披露がすんだことに喜ぶキャストに、まずジェーンが駆け寄り「皆さん素晴らしかったです。全ての動きが具体的になっていますよ」と賛辞を贈り、男性陣と女性陣が向かい合って踊るパートで「踊る時に肘が落ちている人がいます、肘は張りましょう」「椅子から誰かを立たせる振りがある人は、引き上げることをちゃんとやりましょう。自ら立っている人がいるので、引きずって立たせる方向でお願いします。『一緒に踊ろう!』という形がもう少し見えたいので、重心の移動、角度に気をつけて」という、なるほど!というアドバイスが。

 ダニエルからは「みなさん素晴らしいです、ストーリーも立っているし、とても良いのでその調子で頑張り続けましょう」という、エールが贈られて場面披露が終了。スタンバイキャストの上條駿、栗山絵美、湊陽奈、安福毅も、舞台面の上手、下手に立ち、この間一度として座らず、演出や振付の指示を咀嚼しながら、舞台を共に創り上げている姿が強く目に残った。

続いてキャストそれぞれから五十音順での挨拶があった。

安蘭「(話しだそうとしているのに、賑やかなキャストに)静かに!(笑)ご覧いただいているように、本当にとても楽しい稽古場で、毎日毎日ひーひー言いながらも笑いの絶えないそんな現場でございます。今聞いたらあと3週間ということで、結構長いなと思っているのですが、きっとあっという間に過ぎていって、これからどんどんよくなるんだろうなと思っています。こんな短いご挨拶で終わります。そうしないとみんな長いので(笑)、みんな端的にお願いします(一同爆笑)」

石川「本当に、私歴史に残るミュージカルなんてことをしょっちゅう宣伝させていただいてるんですけど、ご覧になったお客様にとっても歴史に残るミュージカルかもしれませんが、たぶんやっている私達も、みんなの歴史に残るミュージカルなんですよ。それぐらいみんなでいま、一致団結して大変なことやっていますので、(安蘭に)ね」

安蘭「ねー」

石川「よろしくお願いします!」

浦井「本日はありがとうございます。このカンパニーでやれること、本当に毎日笑いが絶えませんで、こんなに仲良くやらせていただいてることを光栄に思っております。そしてスタンバイのみんなもそれに付随していると言いますか、みんなで作っているという感覚があるので、お客様にそれが伝わればいいなと思っております。よろしくお願いいたします」

加藤「たぶん再演は難しいキャストが集まっていて、もう皆さん本当に活躍されているばかりの中で、一員としてこの作品に関われることを光栄に思っております。一つひとつのシーンがみんなで力を合わせないとやれないので、自分の為というよりはそれぞれが人の為にひとつ一つをクリアして、最高に楽しい、そしてお客様に喜んでもらえる作品にしていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします」

咲妃「本日はありがとうございました。つい先日全てのシーンの動きがついて、私としては安心もしましたけれども、ようやくスタートラインに立ったなという気持ちでもいます。一日一日のお稽古を皆さんと一緒に重ねていくうちに、私はこの作品への愛や理解がどんどん深まっていっていて、早く皆様にお届けしたいなという気持ちもあります。これからも頑張りますのでよろしくお願いします」

シルビア「こんな濃いメンバーなんですけれども、もはや合宿みたいな稽古場になっております。ものすごく楽しんでいて、みんなも恥をかきながら、お互い本当に常に笑い合って、お互いの間違いを叱るのではなく、それもすごく楽しみながらみんなで作り上げている稽古場がすごく好きです。ぜひぜひ皆様も客席から応援しに来てください。私たち頑張るんで!よろしくお願いいたします」

田代「初日まで4週間を切ったあたりで通し稽古をやったんですよね。4週間前に通し稽古ができるってなかなかないので、ここから初日に向けていったい何回通し稽古ができるんだろうと。そこでどんどんどんどんブラッシュアップして、稽古場でプレビューみたいなことをして、万全の体制で初日を迎えたいなと思っております。是非劇場でお会いしましょう」

橋本「みなさん今日はどうもようこそいらっしゃいました!「Welcome to the Rock 」と「Screech In」の2曲でかなり疲れました。でも本当に見られるってすごいなと思って。皆さんに来ていただいたおかげでものすごく気合が入りまして、役者の本能って言うんですかね、昨日まで「Screech In」は1行しか歌えなかったのに、今日は全部歌いました!(拍手喝采)今日のエネルギーを全部出し尽くしましたので、あとは皆さんうまいこと編集して(笑)、宣伝の方よろしくお願いいたします。でも作品に出てくるキャラクターは、みんなすごく愛しい、一生懸命な人たちばかりなので、そしてこうやって演じるみんなも、僕にとっては本当に愛しい仲間なので、あと1ヶ月切っちゃいましたけれども、その1ヶ月切った稽古をみんなで満喫しながら、楽しみながら本番を迎えたいと思います。そしてお客さんが来た時には最高の『カム フロム アゥエイ』か゜できることをどうぞ皆様、楽しみにしていてください!」

濱田「皆様本日はありがとうございます。私は今までのカンパニーですと、大体もう年長組になっていて、だいたい年齢的にも一番上の方とかもあるのですが、今回はこの私でさえ中堅どころで、この素敵な可愛いポンコツの、愛すべき先輩たち…」

橋本「おい、濱田!(笑)」

濱田「はい、すみません(笑)愛すべきお兄様、お姉様と和気藹々の雰囲気のなか、楽しくやらせていただいております。初日までこのハイレベルな、とにかく高いエネルギーのまま突っ走って、素敵な初日を迎えたいと思いますので、ご協力よろしくお願いします」

森「先ほど踊りを少々間違えた森公美子です。どうぞ上手に編集してください(笑)。このメンバー全員が揃っての『カム フロム アウェイ』は今回だけかもしれないと、皆さん忙しいので、私はちょっと引退をかけてこの膝をしばいても頑張っています。本当に自分の歌さえもきちんと覚えていないのに、椅子の番号を覚えろと言われて血の気が引いたのは私とさとしさんでした。本当になかなか面白いものが観られると思います。このメンバーですし、楽しいですし、それになんと言っても音楽が素晴らしく、そして踊りもケルト音楽に乗った振り付けもなかなか見応えのある踊りとなっておりますので、ぜひ劇場の方に足を運んでいただければと思っています」

柚希「皆様、本日はありがとうございました。この100分間全員がずっと出ているというミュージカルは本当になくてですね、お稽古も朝から晩までずっと私たちここにいて、あっち(控えの自席)に帰ることがなく、本当にクタクタになってお稽古しているんですけれども、

この人と人が支え合うというお話を作りながら、このカンパニーも本当に支え合って作っていて、支え合わないとできない作りになっている作品なんだそうです。さすがだなぁと思うのは、作られる方がそうして作ったミュージカルから、ここに絆が生まれて、それをお届けできるんだな、と思いますので、一生懸命頑張って初日にはお客様に楽しんでいただけるように頑張ります。よろしくお願いします」

吉原「見ての通り、僕以外は非常に面倒くさいメンバーなので(「違う、違う、一番面倒くさい!」とカンパニーが口々に吉原に言って笑い)結構大変なことになるかなと思ったんですけど、本当に嘘偽りなく和気藹々としています。それにはダニーがとても寛容に僕らに対応してくれて、性格的にもすごく僕らにフィットして、ゆっくり稽古をやってくれるのもいいですし。そういう中でジェーンが、まあ結構できないポンコツが多いのですが(笑)そのできない僕らに対しても痺れを切らさずに、いっぱい教えてくれて、この二人のおかげでここまでこられたのかなと思っています。さっきダニーが言いましたが、辛い状況の中でどれだけ人に愛を注げるか、人に優しくできるかというのがたぶんテーマなので、僕たちも今どんどん辛い状況になっている中でも喧嘩をせずに、そして今世の中も辛い状況ですが、誰かに愛を捧げるように精進して、僕は元々愛が深いのですが、更に精進していきますので、ぜひ皆さん劇場にいらして楽しんでください」

それぞれの個性溢れる挨拶のあと、スタンバイキャストが紹介され、メインキャストが喝采を贈り16名のカンパニーと、出演者でもあるバンドメンバーも含めたフォトセッションに。その為の椅子が用意されている最中、この日が誕生日だという栗山絵美に、全員からバースデーソングのサプライズが贈られるなど、終始和やかに撮影が続いた。

最後にダニエルが「日生劇場でお客様とご一緒できることを楽しみに致しております。本当に日生劇場というのは、今までに見たことのないような一番美しい劇場だと思います。1年で2回も行けるなんて本当に幸せです。日本のお客様にも本当に楽しんでいただけるんじゃないかと思います。キャストは謙虚にそして正確に頑張ってくれています。この公演を日本に持ってくることができて、本当に光栄です。東京は大好きな街で、最初に来日してから12年ほど経ちますけれども、たくさんの方に親切にしていただいております。そしてお客様に是非この先を見て頂いて、またその後も何度でも見に来て頂きたいと思っています。本当にすごくディテールの多い作品なので、1回、2回、何度見ても色々な発見がある作品です。キャストが例えばその横でやっている小さいお芝居なども、初見で気づかなかったことに気づけると思いますし、今回のカンパニーだからこそできるというお芝居があると思います。まだまだお稽古は続きますけれども、劇場で皆さんにお会いできるのを本当に楽しみにしております。ニューファンドランドの人達、そしてその人たちが如何に「カム フロム アウェイズ」と交流したか、その物語をお届けできるのを楽しみに思っております。本日はありがとうございました」と挨拶してくれた。

 ここで終わるかに思われたが、やはり締めくくりは町長でないとということで橋本さとしが押し出され「これは聞いていなかった!」と言いつつ橋本が「では僕がポンコツ町長じゃないというところ、僕たちみんなの気合いをあなた方にお届けしたいと思います」と言うや、全員に向き直って

橋本「ワン」

全員「ワン」

橋本「ツー」

全員「ツー」

橋本「スリー」

全員「スリー」

全員「Screech In!」

 の掛け合いで、稽古場公開を見事に締めくくった。

 困難な時にこそ寄り添い、悲劇を悲劇に終わらせない、悲しみ幸運に変えていくというメッセージと、100分ノンストップ出ずっぱりの12人のキャストが100人もの登場人物を演じ分けていくという、演劇的な構成の面白さにあふれた作品の開幕に期待がふくらむ、熱い稽古場だった。

(取材・文・撮影/橘涼香)

ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』

■公演期間:2024年3月7日 (木) ~2024年3月29日 (金)
■会場:日生劇場

■脚本・音楽・歌詞:アイリーン・サンコフ/デイビット・ハイン
■演出:クリストファー・アシュリー

■出演:安蘭けい、石川 禅、浦井健治、加藤和樹、咲妃みゆ、シルビア・グラブ、田代万里生、橋本さとし、濱田めぐみ、森 公美子、柚希礼音、吉原光夫(五十音順)
■スタンバイ:上條 駿、栗山絵美、湊 陽奈、安福 毅(五十音順)

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