【稽古場レポート】「笑わせんな!」くすぐり、くすぐられることで快感を得るフェティスト達の饗宴。その果てに現れるのは真実の愛?

2月8日(木)から下北沢本多劇場で上演されるメディアミックス・ジャパン「笑わせんな!」は、福谷圭祐脚本、オクイシュージ演出の意欲作。2月から開催される下北沢演劇祭の一環だ。

主演に浜中文一を迎え、終始ハイテンションに繰り広げられるクセもの揃いのブラックコメディ。複雑にもつれた糸を組み解いていくと、そこに見えてくるのは意外なほど切ない恋心だった。

キーワードは、くすぐることで快感を得る「ぐり」と、くすぐられることで快感を得る「ぐら」。そして二人だけの秘密の暗号「セーフワード」。人と心を通わせることを切望する人たちは、いつも愚かで愛おしい。

ハサミを使えなくなった美容師

この日の稽古は、オープニングと一場、二場の通しから始まった。
地下稽古場には、すでに美容室のセットが組まれていた。
音響機器もあり、ドアが開くたびに雨音が流れ、外は雨が降っていることに気づく。

オープニング、舞台上には施術椅子に座る佐藤(辻本耕志)がいて、美容師の藤原(浜中文一)が今にも髪を切ろうとしてハサミを握っている、離れた場所にそれを見守るオーナーの松本(入江雅人)がいる。何気ない会話をしつつ、なかなか髪を切らない藤原にしびれを切らす、客の佐藤。
ふいにハサミを持つ手を左手で押さえ、叫び出す藤原。

くすぐる「ぐり」と、くすぐられる「ぐら」

そこに山田(鳥越裕貴)が来店する。ハサミが使えないという藤原に対して、山田も、なぜか優しい。さらに、そこに香坂(福井夏)が現れる。
そそくさと帰る山田。香坂は美容室の客ではないようだ。

藤原から香坂に向かってふいに問われる「ぐり」ですか?「ぐら」ですか?の問い。ここで香坂が美容室の客ではなく、地下の秘密サークルの参加希望者ということがわかる。ここから藤原役の浜中の演技は、さらにハイテンションになる。

さらにサークルメンバーと思われる田中(佐藤日向)と郷田(松島庄汰)も現れる。次に現れたのは吉岡(久ヶ谷徹)。彼も、くすぐりサークルのメンバーらしい。彼も香坂に「ぐり」であるか「ぐら」であるか聞く。どうやら、この役割が重要な意味を持つらしい。

藤原は店先にオーナーの松本が来ていることに気づき、香坂や吉岡達を地下室へ行かせる。勘繰る松本に、しらを切り通そうとする藤原、そこに地下からバケツを転がしたような大きな音が響く。ここからは藤原と、不審がる松本のコントのような攻防が続く。

そこに香坂の彼氏、鯉川(岐州匠)が来店する。

ざっと、ここまでが一場だ。

本気の言葉、セーフワード

二場で「セーフワード」という重要なキーワードが登場する。
くすぐりプレイの性質上、「イヤ」とか「無理」の否定の言葉は、本心とは逆に自然と口から出てしまう。それゆえに本当に嫌なのか、やめて欲しいのかがわからない。本当にやめて欲しい時に使う言葉をあらかじめ決めておく「これを言ったらマジ」というフレーズがセーフワードだ。それは2人だけの約束らしい。

ただ相手の喜ぶことをしたいだけなのに、なかなか気持ちが通じない。
山田が藤原を思う気持ちもまっすぐなようで、微妙にずれている。

ここでサークルのメンバー三池(松原由希子)も現れる。誰かに追われているようだ。藤原の元パートナーであった比嘉(山下リオ)も来る。

狂気を帯びた登場人物の中で、常識的な性格を思わせる比嘉役の山下リオの演技に注目したい。比嘉のセリフも、作品全体のテーマに直結している。

ここで演出家、オクイシュージによる振り返りが行われた。セリフの言い回しや立ち位置、髪を切るといったアクションが入るシーンに細かな調整をしていく。

最後に心から笑い合えるのは誰なのだろうか。

(取材・写真/新井鏡子)

公演情報

「笑わせんな」
脚本:福谷圭祐
演出:オクイシュージ

出演
浜中文一 山下リオ 鳥越裕貴 松島庄汰 岐洲匠 佐藤日向
松原由希子 福井夏
辻本耕志 久ヶ沢徹 入江雅人

スケジュール
2月8日[木] 18:30
2月9日[金] 18:30
2月10日[土] 12:00/ 17:00
2月11日[日] 12:00
2月12日[月] 12:00
2月13日[火] 休演日
2月14日[水] 13:30/ 18:30
2月15日[木] 13:30/ 18:30
2月16日[金] 13:30
2月17日[土] 12:00/ 17:00
2月18日[日] 12:00

チケット料金
全席指定
一般¥9,800 U-25¥6,500 

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