【稽古場レポート】ダサければダサいほど、輝く。それが青春。不思議なグルーヴ感のポエムに笑った後は、きっと彼らが好きになる!「ポエム同好会」

左から岡部直弥、真野拓実、望月雅友、吉田知央

中央、左から石渡真修、吉田知央

10月9日(水)から中目黒キンケロ・シアターで開幕する、おぶちゃ7周年記念公演「ポエム同好会」。開幕まであと一週間に迫るなか、通し稽古を観た。15人の出演者とスタッフが入るといっぱいになってしまう稽古場には、笑いが絶えなかった。

プロローグは、とある高校に3年生の関春生(石渡真修)が転校してくるところから始まる。担任は笑い方にクセがある教師、韮山啓太(小谷嘉一)。前校では、サッカー部のキャプテンをしていた、いわゆる「一軍」の関。そんな関に韮山が勧めた部活は、学校一地味でモテない男子が集結している「ポエム同好会」だった。

左から石渡真修と小谷嘉一

関の目の前でポエムを披露する同好会の4人。メンバーは熱血キャラで声の大きい権藤太志(吉田知央)と、イジられキャラの「シムレン」こと志村蓮(望月雅友)、気の強い姉が大好きなシスコン「マッツー」こと松原慎之介(真野拓実)に、箱推しオタクの弓崎琉輝亞(岡部直弥)だ。

まるでアカペラのコーラスグループのように肩を寄せ合い、片手でスナップをしながら、一言ずつ言葉を発していく4人。そのボソッと呟く様子や、間合いの取り方が絶妙で、たまらなく笑いを誘う。不思議なグルーヴ感もある。しかも、その言葉が全く詩的ではなく見たまま、感じたままなのだ。

相手のポエムが入ってきたときの直感をどこまで信じられるかがポイント」と志村が言うように、彼らは相手の言葉を受けて、真剣に自分の言葉をチョイスしている。
そこがなぜだかグッとくる。

左から宮越愛恵と髙畑岬

柳下大と小谷嘉一

宮越愛恵

そんなポエム同好会に廃部の危機が迫る。そもそも「部活」でもなく活動実績がない謎の同好会だったのだ。部室をダンス部のために空け渡せと迫る顧問の榎本祐紀(髙畑)。融通が利かない学校権力の象徴のような教師だ。

廃部と引き換えに文化祭で恋愛リアリティーショーに参加することになったポエム同好会の5人。

左から工藤菫、未菜、鈴理、彩島圭叶、紅羽りお

相手は、対極にいるようなキラキラしたダンス部女子。実はその中の一人はポエム同好会の男子が好き。そんなダンス部の女子は速水明世(未菜)、篠田真希(工藤菫)、三浦琴乃(彩島圭叶)、小森和歌菜(鈴理)(あだ名はモリコ)の4人。彼女たちのおしゃべりは恋バナも含みつつ、とりとめのないものばかりで、まるで実際の女子高生のよう。見ているだけで幸せな気分になる。

一方、職員室で「恋愛リアリティーショー」の是非を話し合うのは保健室担当でセクシーなファッションの堤菖(宮越愛恵)と、教育実習生でポエム同好会、琉輝亞の兄、力也(柳下大)。

柳下大

女子どころか同好会以外の生徒とも口をきいたことがない4人が、恋愛リアリティーショーに向けて特訓合宿をすることになり、そのコーチとして選んだのが力也だった。

学校では女子と話せない権藤だったが、ダンス部の速水とその後輩岩田香織(紅羽りお)がバイトする花屋では、客として一言二言話すことができた。

「恋リア」コーチに就任した力也は、モテない5人の前で熱弁を振るう。熱血ぶりと陰キャの5人と温度差が激しく、ここも見どころだ。
そこに松原真之介の姉、絵美(宮﨑想乃)が弟の弁当を届けにやってくる。
鉢合わせする力也と絵美。実はこの2人、かつてマッチングアプリで出会っていたのだ。そこから二人の出会いの回想シーンが始まる。それを見ていた同好会一同は、コーチを力也から絵美に変える。そこから絵美のスパルタ指導が始まっていく。

中央、左から宮﨑想乃と柳下大

終始一貫してクドい教師を演じる柳下大と、一本筋が通ったヤンキー姉ちゃんを演じる宮﨑想乃の演技も目が離せない。この2人の掛け合いも面白い。

宮﨑想乃

ここからスポ根ドラマのように特訓を重ねていく5人。最初は4人との距離を感じていた関も少しずつ打ち解けていく。「少しだけ居場所ができた」と嬉しそうに独白する関。
サッカー部のキャプテンだった関は「一軍」だったのではないのか?

果たして恋愛リアリティーショーは成功するのか?ポエム同好会の行く末は?女子とは仲良くなれるのか。ここまで観たら5人のことが好きにならずにいられない。
青春とはダサくてキモい。10代は人にどう思われているのかばかり気になる季節。傷つきやすい魂を抱えながら、それでも前に進んでいく。わざとらしくドラマチックなことが起こらないのもいい。
劇中に入る歌「忘れらんねえよ」の「バンドワゴン」の一節も切なくて印象的だ。

この作品は大部恭平のオリジナル。実は9年前に他の団体に書いたものだそうで、そこから時代性も考慮して加筆・修正した。
どの点を変えたのか聞くと

「9年前は『恋愛リアリティーショー』が『フィーリングカップル』でした(笑)。今は通じないですよね。あとは職員室で職員会議をする場面や、教師のシーンを増やしました。9年経って自分も大人になってきて、大人の目線でも見られるようになったことですかね。でも、子供にとって職員会議って何が行われているのか分からなくて、怖いものでしたよね。あとは、真之介の姉の絵美のキャラクターもガラッと変えました。昔は普通のお姉さんだったんですよ。今回は強めの女性にしました」

気が強いヤンキーキャラの絵美は、今回が初めての登場だったのだ。

初演を観ている人は見比べてもいいかもしれない。でも文化やデバイスが変わろうとも、人がその場で言葉を発する「ポエム」は普遍的。作中でも、ところどころで集結してポエムを紡いでいく。そんな彼らの絆が深まっていく様子にも注目したい。

(写真・取材・文/新井鏡子)

公演概要

おぶちゃ7周年記念公演「ポエム同好会」

公演期間:2024年10月9日(水)~10月14日(月) 全10公演
会場:中目黒キンケロ・シアター
作・演出:大部恭平

出演:石渡真修、吉田知央、望月雅友、真野拓実、岡部直弥、未菜、工藤菫、彩島圭叶
   鈴理、柳下大、宮﨑想乃、紅羽りお、髙畑岬、宮越愛恵、小谷嘉一

演出補:小谷嘉一
音楽:IKE
舞台監督:宮島カズキ
舞台美術:椎橋蘭奈
音響:前田マサヒロ
照明:近藤可奈子(FictiF)
宣伝美術:松山真衣
スチール撮影:下城祐美
メイク:Fuuko
主題歌:IKE & rice water Groove Production
制作:近藤侑風、ofcha.biz
映像:コヤムービー
Web:鈴木莉菜
衣装:平山空(企画演劇集団ボクラ団義)
プロデューサー:大部恭平
企画協力:クオッカーズ

チケット
【前売】
SS席:9,900円[ 最前A列,B列 ]
S席:7,700円[ C列,D列,E列 ]
A席:5,500円[ F列以降 ]
U-18割:2,200円 ※要身分証提示

【当日】
SS席:10,500円、S席:8,500円、A席:6,000円、U-18割:2,700円
(全席指定・税込)

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