2つの時間を行き来する、人間同士の繋がりが迫る、100点un・チョイス! ミステリーの新機軸 全てに張り巡らされた伏線が、終幕に向けて一気に崩れ落ちる最新作

2つの時間を行き来する、人間同士の繋がりが迫る、100点un・チョイス! ミステリーの新機軸 全てに張り巡らされた伏線が、終幕に向けて一気に崩れ落ちる最新作

 俳優であり、脚本・演出家としても活躍する相馬あこが主宰する演劇ユニット100点un・チョイス!。早いもので旗揚げから9年目となり、ユニットとしてのファンもだいぶ育ってきたところだろう。
 そんな100点un・チョイス!の次回第19回公演は、お得意のミステリー・テイストによる新作『カタチ』。キャンプ場で起きた殺人事件の犯人として獄中に居る男と、彼の手記を読んで疑問を持つもう1人の男。18年という年月を挟んだ2つの時間軸を往来しつつ紡がれていく物語になるという。
 今回は主演が大崎捺希と前嶋曜によるWキャストという形で、事件に疑問を持つもう1人の男に江田剛が選ばれるなど、舞台経験が豊富な期待の若手俳優達を起用して挑むこととなった。100点un・チョイス!の新機軸になり得るという新作にかける想いを、大崎・前嶋・江田、そして相馬に聞いた。

―――100点un・チョイス!は結構再演も多いのですが、今回は新作ですね。どんな物語でしょう。

相馬「はい! 新作です。だいたい1年に1本のペースで、再演と交互に上演しています。
 今回の作品は『ヒューマン・サスペンス』と謳ってます。Wキャストの2人(大崎・前嶋)が演じる松永拓人という主人公が18年前に犯した殺人の罪を、現代に疑う“ある男”が登場します。それが江田さんです。松永は既に逮捕されているのだけど、“ある男”はそれを冤罪では無いか、と謎を掘り下げていく。2019年の人物画が主軸になりつつ、2001年の話も主体になっているわけで、2001年を回想しつつ物語が進みます」

―――Wキャストとなる大崎さんと前嶋さんは2.5次元の舞台にも沢山出演していらして、お二人とも『刀剣乱舞』にも出演していますよね。

大崎「事務所が一緒なんです」

前嶋「でも現場で一緒になったことは無いんです。共演は初めてですね」

―――ここにいらっしゃる皆さんは物語の中心となる役どころを演じられますが、キャスティングした理由を聞かせてもらえますか。

相馬「まず“ある男”役の江田さんですが、そのイメージに合った人を探して、過去に出演された皆さんから情報収集していたら、ある方に紹介されました。お目にかかってみたらもうピッタリだったんです。落ち着きを見せる役ですから、そういった雰囲気が無いとダメなんです。もちろん事務所の方の勧めもありました。
 大崎さんと前嶋さんも同じように探していたのですが、その中で候補に挙がった2人です。主役をWキャストにするのはあまりやったことがないので、少し躊躇しましたけれど、やはりイメージがピッタリなんです」

―――その他のキャストは?

相馬「オーディションも含めて集めましたが、割と年齢層がこれまでよりも下がっています。実は3年にわたるコロナ禍で私の周りにも俳優業が上手くいかなかったり、廃業する人も出てくるなど辛い話が多かったので、応援する気持ちで若いキャストを中心にした作品にしたかったんです」

―――役のイメージに合っていたそうですが、皆さんいかがですか?

江田「サスペンスは初めてだからとても興味があります。これまではどうしてもアクションやダンスが入ったものが多くて、ストレートプレイはあまり経験して無いので、自分への挑戦だと思って取り組みます」

大崎「僕は久しぶりのサスペンスものですが、やはり普段は殺陣とかダンスが多くなります。だからここで役者としてもう一段ステップを上がりたいと思います。相馬さんの演出も楽しみですね」

前嶋「僕もミステリーやサスペンスは初めてですが、個人的にミステリー小説がを読むのが好きなんで楽しみです。そして今回が初主演だから不安な気持ちもあるのですが、自分が演ってみたい芝居がここにあるなと思いました。まだ稽古が始まって数日ですが、とても楽しいです」

―――大崎さんと前嶋さんはWキャストですね。お互い意識し合うんでしょうか。

大崎「昔は競争心を持つこともありましたが、今はお互いに観ていていいところを採り入れています。意見の共有ができるのはいいですね」

前嶋「そうですね。(事務所の)先輩だからちょっとプレッシャーもあったんですが、今ではお互いに凄く協力し合ってますよ」

―――ところで前嶋さんはどんなタイプのミステリーがお好きなんですか?

前嶋「クローズド・サークルなタイプの作品でしょうか。あと国内ミステリーが好きです」

相馬「台本を読んで貰ったら湊かなえさんに雰囲気が似てるといってくれました。私も国内ミステリーが好きで子供の頃から読んでいます」

江田「僕は名探偵コナンが大好きですね(笑)」

相馬「私も好き!! マニアの域ですよ」

江田「映画は全部見てます。やっぱり世代なんでしょうね」

―――さて、3人は相馬さんとの作品作りは初めてかと思いますが、どんなタイプの演出家だと思いますか。

大崎「本人を前にして少し恥ずかしいですが、なんか母のような姉御のような……引っ張ってくれて包み込んでくれる感じですね。相馬さんの一言一言が先を予見しているような感じもあります」

前嶋「同感なんですが、この作品を終えたら誰かがひとつ殻を破っている気がします。背中を押してくれる。演出家という訳でもなく、人として何かの力になる気がします」

江田「初めての感じるタイプの演出かな、と思ってます。お芝居が好きなのか人が好きなのか、演者と同じ目線で創り上げてくるんですね。人の心を溶かすのも上手だし、皆で作っていこうというスタイルですよ」

―――では劇作家としてはどうですか。

大崎「意外な伏線が結構仕込まれていますよね。1度読んで分からなくて、もう1度読んだらビックリすることもあって。もう頭の中が凄いんだろうなあと思います。そんな世界を僕のファンの皆さんや友達にも観て欲しいです」

前嶋「初めて読んだとき、だいぶ胃もたれしたというか(笑)。結構重い作品なんです。人間関係も複雑だし。さらに現代と過去を行き来するし、台詞も一言一句聞いていないと解らなくなりますね」

江田「あこさんの“好き”が前面に出ている作品ですね。もうストレートに沢山でている。きっと伏線張るのも楽しんでやっているんだろうなと思います」

相馬「私は少し変態なのか(笑)、書いている間にはもう気分が悪くなるくらいにいろいろ調べるんです。例えば犯罪者の心理や対する被害者心理、過去の実例や未解決事件など。でもそのまま盛り込むとあまりに重いので、過去と現代を抽象的に行き来することで生々しさを排除しています」

―――凄く真剣に作品と立ち向かっているんですね。今回はイケメン3人が揃うから、ハーレム化を狙っているのかと思いました(笑)

相馬「そんなことはないですよ(笑)。確かにイケメンが多いと稽古期間のテンションが上がるかも……(笑)。いやいや、他意は無いですよ」

―――では応援してくれるファンへのメッセージをお願いします。

大崎「キャスト発表で喜んでくれた、普段応援してくれる皆さんや、楽しみにしてくれている皆さんが、見終わった後にどのキャストも素敵だと思い。家に帰ってからも反芻して楽しめる作品にしようと思います。楽しみにして劇場へお越し下さい」

前嶋「僕が舞台から発するメッセージを、僕を知る人だけで無く、知らない人にとっても、何かの力になったらいいですね。初主演ですが必要以上に気負わず、リラックスしてやりたいです。そしてひとつ殻を破りたいですね」

江田「江田剛として初挑戦の部分もあるので、僕の新たな面を楽しんでいただきたいです。キャスト一同和気あいあいと作っていくので、作品としては重くとも、キャスト同士温かく作りたいですね」

相馬「『カタチ』という題名にも色々な意味が含まれているんですが…これ以上言えません(笑)。作品を観て下さった皆さんの日常に何か変化があるといいですね」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

大崎捺希(おおさき・なつき)
熊本県出身。オーディションの合格をきっかけに上京し、舞台を中心に俳優として活躍。これまでに、舞台『刀剣乱舞』慈伝 日日の葉よ散るらむ〜、『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』シリーズ、『Paradox Live on Stage』シリーズ、『⻤切丸伝〜源平⻤絵巻〜』再演、『海街 diary』など数々の作品に出演。

前嶋 曜(まえじま・よう)
神奈川県出身。2017年『仮面ライダーアマゾンズ』シーズン2(Amazon Prime Videoオリジナル作品)のオーディションに合格し、主役として俳優デビュー。その後、舞台『イケメン戦国 THE STAGE』シリーズ、LIVE STAGE『スケートリーディング☆スターズ』、舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-など、数々の作品に出演。

江田 剛(えだ・つよし)
大阪府出身。2001年、ジャニーズ事務所入所。2018年2月まで数々のバックやステージで約10,000回以上のステージを経験。2019年に舞台『The Foreigner ザ・フォーリナー』で外部作品で単独初主演に抜擢される。その後も、舞台『のべつまくなし・改』、『トムとディックとハリー』、『知恵と希望と極悪キノコ』など、数々の作品で主役を務め活躍。2016年にはジャニーズ事務所内ユニット・宇宙Sixに参加。2020年の解散までメンバーとして活躍。2021年退所。その後も舞台出演を続けている。

相馬あこ(そうま・あこ)
北海道出身。舞台専門学校卒業後に女優・米倉涼子の付き人に抜擢され、ブロードウェイミュージカル『シカゴ』の付き人も2度経験する。並行して自信の舞台出演を続け、さらに東京セレソンDXでも演技を学ぶ。2013年からは演出家としての活動も開始。2014年より、自ら主宰を務めると同時に作・演出を手がける演劇ユニット100点un・チョイス!を旗揚げ。2015年1月には旗揚げ公演となる舞台『とけないまま、とけていく』を成功させた。

公演情報

100点un・チョイス!第19回公演
『カタチ』

日:2023年6月14日(水)~18日(日)
場:シアターサンモール
料:S席[前方列・特典グッズ付]8,500円
  A席:6,800円 観劇に行こう!特別応援席
  [後方列・枚数限定]4,800円
  (全席指定・税込)
HP:https://www.100ten-un-choice.com/
問:100点un・チョイス!
  mail:100ten.un.choice.ticket@gmail.com

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