2023年にデビュー20周年を迎えた、美弥るりか。21年目の今年、新たな一歩として初の三人芝居に挑戦する。
「繊細な会話劇に挑戦したいという気持ちがずっとありました。これまでなかなかそういった機会がなかったのですが、今回、呼吸さえも届く空間で濃密なお芝居ができることを本当に嬉しく思っています」
物語はある冬の朝、ファミレスの店長・戸川秋彦が目覚めるとベッドに見知らぬ女が寝ていたことから始まる、ワンシチュエーション会話劇。秋彦とベッドで寝ていた女・ちひろ、そして秋彦と同棲をしている浩樹の3人のドタバタと笑いが交差する中で、それぞれが抱える“好きな人への想い”を丁寧に描く。
本作では、美弥自身がプロデューサーの立場として企画段階から積極的に携わっており、戯曲選びにも参加したという。美弥は「最初にこの戯曲を読んだとき、気持ちが浄化されるような感覚がありました」と話す。
「最後まで読み進めたとき、自然と涙が出てきました。ただ、それは悲しい、辛い涙ではなく、気持ちを浄化し、前向きにさせてくれる涙。この戯曲を読んですぐに、これをやりたいと素直に思いました」
今回、美弥が演じるのは、恋に悩む普通の女性。
「ちひろは明るく飄々と生きているように見えて、実はある想いを背負っています。その辛さを隠すために明るく振る舞っているという、ある意味ではギリギリの精神状態にあります。そうした繊細な気持ちを表現したいと思います」
“普通の女性”を演じる機会がこれまであまりなかった美弥にとっては、役作りという面でも“挑戦”だ。
「私自身は彼女と同じ経験をしたことはないので、想像するしかないですが、何かを愛おしく思う気持ちは理解できます。愛おしい、でも断ち切らなければいけない。その繰り返しで苦しんでいるのがちひろです。ギリギリの狭間を生きている姿や彼女の表面に出ていない思いもしっかりと自分の中で作って演じたいと思います」
上演される六本木トリコロールシアターは、役者たちの息遣いまで感じられる劇場空間だ。
「この役を演じるために色々なことに悩み、苦労すると思います。ですが、その分、大きな充実感も得られるはず。きっと私の新鮮な姿に驚いていただけると思いますし、21年目の挑戦の第一歩として気持ちも新たに前に進めたらと思います。普段よりも身近に感じていただける劇場です。3人の生き様を一緒に味わっていただけたら嬉しいです」
(取材・文:嶋田真己 撮影:間野真由美)
プロフィール
美弥るりか(みや・るりか)
2003年に宝塚歌劇団に入団(89期)。男役として2017年には『瑠璃色の刻』、2019年には『アンナ・カレーニナ』で主演を務める。2019年6月の退団まで唯一無二の存在感で、男役だけでなく幅広い役柄を好演した。宝塚歌劇団退団後、独自の個性を生かし、舞台だけでなくファッションやライブ等、様々なフィールドで活動の幅を広げている。最近では、2023年、舞台『キングダム』で楊端和役、a new musical『ヴァグラント』では桃風役、2024年、明治座創業150 周年ファイナル公演 舞台『メイジ・ザ・キャッツアイ』執事 藤堂・ホークスクロウ役を務めた。た、「2022 All About ミュージカル・アワード」で助演女優賞を受賞し、益々注目を集めている。
公演情報
舞台『ビューティフル・サンデイ』
日:2024年7月25日(木)~8月4日(日)
場:六本木トリコロールシアター
料:8,800円(全席指定・税込)
HP:https://beautiful-sunday2024.com
問:公演窓口
mail:beautiful.sunday2024@gmail.com