ジャンルの垣根を跳び越え、果てなき舞踊を創造している大和シティー・バレエ。「想像×創造」シリーズ第5弾として贈るのは『雪月花』。
池上「雪・月・花、それぞれをテーマにした3作品構成になります。“雪”の『ゆきひめ』は、もともと井上バレエ団のレパートリーで、初演時には日本舞踊家も出演した作品ですが、今回はバレエ版です。映像でしか拝見していませんが、とても美しい作品です。“月”は二見一幸先生振付の『月夜に集う民の詩』。きっと二見先生らしい、格好良くガンガン踊らせる作品になるでしょう」
そう語るのは若手振付家として注目を集める池上直子。大和シティー・バレエとこれまでいくつもの作品を創作してきたが、今回は“花”を担当する。
池上「プロデューサーの佐々木三夏先生に“花”のモチーフとなる文学作品を相談していたところ、坂口安吾の『桜の森の満開の下』はどうだろうと提案がありました。原作を基本に構成し、美しさと残酷さが交錯する物語を、色々な対比でみせていきたいです。安吾作品の要素には“虚無”があると思いますが、ダンスでそれを表現するのは難しいですね。でも対比の中で、(藤間)蘭黄先生から虚無の風がスッと吹き抜けるような振付構成を考えています」
主演は新国立劇場バレエ団のプリンシパルとして活躍し、現在は同劇場バレエ研修所の主任講師として、後進の指導にもあたっている本島美和。そして、日本舞踊家でありながら、様々なジャンルのダンサーやクリエーターとの創作活動を展開し、バレエ界の至宝 ファルフ・ルジマトフなどとの共演も重ねてきた藤間蘭黄。
本島「蘭黄先生とご一緒するのはもちろん初めてです。そもそも機会がありませんから。池上さんの振付は過去にも経験があり、ストーリーに忠実な振りを付けられるのですが、踊る中で“振り”が時には“セリフ”でありたいと思う私には、やっていて楽しいし発見があります」
藤間「今まで私が創作した作品にバレエを採り入れても、自分で振りを考えてきました。日本舞踊以外の方の振付で踊るのは今回が初めてです。しかも今回は山賊役という、普段なかなかまわってこない役柄なので楽しみです」
さらに菅井円加、福田圭吾といったトップクラスのダンサーが出演する大和シティー・バレエ夏季公演『雪月花』。日本古来の四季折々の美しさを象徴する雪・月・花にまつわる3つのストーリーが、どのように紡ぎ出されるか楽しみだ。
(取材・文:渡部晋也 撮影:間野真由美)
プロフィール
本島美和(もとじま・みわ)
2001年、新国立劇場バレエ研修所第1期生として入所。研修所修了生初の新国立劇場バレエ団契約ソリスト。2005年、『カルメン』で主役に抜擢。その後も新国立劇場の数多くの作品で主演。2011年、同劇場バレエ団プリンシパル。2022年に退団し、現在は同劇場バレエ研修所 所長補佐・主任講師。
藤間蘭黄(ふじま・らんこう)
祖母・藤間藤子、母・蘭景より手ほどきを受け、6歳で初舞台。16歳で藤間流名取となる。古典の継承とともに、ゲーテの『ファウスト』を1人で演じる『禍神』、オペラ『セビリアの理髪師』の舞
台を江戸に移した『徒用心』など、創作作品も多い。2015年には、世界的ダンサー ファルフ・ルジマトフ、ロシア国立バレエ団芸術監督、岩田守弘と共に『信長』を世界初演。国内外の公演活動を精力的に行っている。重要無形文化財「日本舞踊」総合指定保持者、日本芸術院賞受賞、紫綬褒章受章。
池上直子(いけがみ・なおこ)
振付・演出家・Dance Marché主宰。2010年、Dance Marchéを立揚げ。2016年、文化庁在外研修員渡独。大和シティー・バレエでは『牡丹灯篭』、『玉藻の前』、『雪女』など振付。日本バレエ協会、品川キャナルアートモーメントなど依頼を受け作品提供を行う他、朗読音楽劇の脚本・演出、映像監督など、多岐に渡り活動する。2019・2022年度オン・ステージ新聞若手振付家ベスト1。
公演情報
Yamato City Ballet Summer Concert 2024
想像×創造 Vol.5『雪月花』
日:2024年8月17日(土)17:00開演(16:15開場)
場:大和市文化創造拠点シリウス 芸術文化ホール メインホール
料:+S席8,800円 S席6,600円
A席5,500円 B席4,400円(全席指定・税込)
HP:https://www.ycb-ballet.com/2024summer
問:大和シティー・バレエ
tel.050-1310-7318(10:00~19:00)