世界の、そして永遠の名作『星の王子さま』を、能と音楽で紡ぎ直す試み 津村禮次郎と仲野麻紀の出逢いが新しい世界を創り上げる

 「大切なものは、目に見えない」。世界中200以上の国や地域の言語に翻訳され、愛されているこの言葉はフランスの小説家、サン=テグジュペリによる『星の王子さま』の一節。小説や絵本だけでなく、演劇・ミュージカル・ドラマなど多くのアーティスト達が様々なアプローチで『星の王子さま』の世界に迫っているが、3月に小金井 宮地楽器ホールで上演される「『星の王子さま』との出逢い」は、日本の伝統芸能である能と音楽でその世界を表現しようという試みだ。

 能役者として登場するのは津村禮次郎。古典はもちろん様々なダンスや表現との共演に積極的に取り組んできた津村だが、学生時代から小金井に暮らし、自ら主宰した『小金井薪能』は40年以上続いている。

津村「僕自身も大好きな作品で、これまでも皆さんが挑むいろいろな試みも沢山観てきましたが、まさか自分に回ってくるとは思いませんでした。僕じゃあ“星のおじいさま”ですよ(笑)」

 そして音楽を担うのは日本とフランスを往復して独自の表現を追い求めているサクソフォーン奏者・仲野麻紀。クラリネットやピアノも奏で音楽を組み立てるが、2年前にソロ・パフォーマンスとしてこの作品に挑んでいる。

仲野「前回はナレーションが入りましたが、舞台上は私1人で孤独でした。それが今回はサクソフォーンという西洋楽器に、日本の伝統音楽から謡・大鼓も加わります。リハーサルで音を出した瞬間にこんな息づかいの世界があるんだと、驚くとともに楽しみで仕方なくなりました、このような機会は本当に貴重であると思います」

津村「もちろん謡も入りますが、それは物語からフレーズを抽出して作る予定です。そこで能の楽器も1つ入れたいと考えました。サクソフォーンの柔らかな音色には強い音が良いかなと思い、大鼓方で若手の佃君に声をかけたんです」

佃「皆さんとのリハーサルはすごく楽しかったです。能の世界ではなかなか他との交流が許されないところがあって……。ようやくこの数年で機会に恵まれるようになったのですが、仲野さんとはその楽器と会話をしている、そして心が通った気がしました」

 能の舞と謡。サクソフォーンやピアノの音色、そして空間を切り裂くような大鼓。それらが築く世界は観客の心の中にどんな『星の王子さま』を描き出すのだろう。まさに幽玄の極みとも言える舞台が、来春の小金井に姿を現すに違いない。

(取材・文:渡部晋也 撮影:友澤綾乃)

プロフィール

津村禮次郎(つむら・れいじろう)
福岡県出身。一橋大学在学中に女流能楽師の草分である津村紀三子に師事し、卒業後は先代観世喜之に師事。1974年、緑泉会を継承。1963年、能『花月』にて初シテ。年4回の緑泉会定例公演のほか、1979年に『小金井薪能』を作家・林望などと設立する。古典能の公演のほか指導者としての若手育成、新作能や創作的活動も積極的に行っている。

仲野麻紀(なかの・まき)
サクソフォーン奏者。2002年、渡仏。パリ市音楽院ジャズ科修了。様々なプロジェクトに並行して関わり、ジャズとワールドミュージックを横断。2009年から「open music」を主宰し、音楽レーベル・コンサートの企画・招聘を精力的に行う。

佃 良太郎(つくだ・よしたろう)
東京都出身。能楽大鼓方高安流。東京藝術大学音楽学部 邦楽科能楽囃子専攻卒。父・佃良勝、人間国宝 柿原崇志、人間国宝 故安福建雄に師事。高安流大鼓方として1997年に『三輪 サシクセ』で初舞台。伝統的な能楽だけでなく、最近では様々な企画にも参加している。

公演情報

【にっぽん、体感。―古典芸能の祭典】「 星の王子さま」との出逢い ~能と音楽で綴る物語~

日:2024年3月9日(土)16:00開演(15:30開場)
場:小金井 宮地楽器ホール 大ホール
料:一般5,000円
  U25席[25歳以下]3,000円 ※要身分証明書提示(全席指定・税込)
HP:https://koganei-civic-center.jp
問:小金井 宮地楽器ホール チケットデスク
  tel.042-380-8099(10:00~19:00/休館日除く)

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