人気作品を東京バレエ団が誇るダンサーによるゴージャスな配役で 人形達と共に冒険の旅に出るマーシャの成長物語

 数多いバレエ作品の中でもクリスマスが近くなると多くのバレエ団で上演される『くるみ割り人形』。少女マーシャが出会う一夜のファンタジーが、未来のバレリーナを目指す少女達の胸を躍らせる。

 「私もそうでした。幼いころから曲を耳にするだけでワクワクするんです。踊る側になっても、その気持ちは変わりません」

 そう語るのは東京バレエ団のソリストとして活躍する涌田美紀。12月の『くるみ割り人形』でマーシャを踊る。今回は主役のマーシャと王子に、5 公演それぞれに異なるダンサーが配役されるという、何とも贅沢なキャスト編成にも注目だ。

 「5公演全てで主役が変わるというのはなかなかないと思います。きっと観にいらっしゃる方もどの公演を観るか迷うんじゃないかと(笑)。他のキャストに負けないように、というわけではないですが、やはり他とは違う、私自身が感じるマーシャを表現したいですね。私がマーシャを踊るのはこれで2回目ですが、今回はパートナーが生方隆之介さんに替わりました。生方さんは今回がくるみ割り王子デビューですから、2人で新しい雰囲気を創るのが楽しみです。今は芸術監督である斎藤友佳理さんから沢山の指導を受けています」

 さらに東京バレエ団の『くるみ割り人形』は2019年に衣裳や装置がリニューアルして、東京バレエ団独自の演出が評判となっている。

 「主人公のマーシャは大好きな人形達(ピエロ、コロンビーヌ、ウッデンドール)と離れることなく一緒に冒険するんですが、そこは他にはない演出ですね。あと2幕、お菓子の国の場面直前では、クリスマスツリーから飛び出すように各国のキャラクターが出てくる演出になっています。新しい衣裳はとても可愛らしく、この作品にピッタリですし、素敵な装置も幕が開いた瞬間に心が浮き立つことでしょう」

 そんな涌田は東京公演の後に控える西宮公演でもマーシャを踊ることになっている。

 「私は大阪出身なので、昨年は堺で踊りました。その時は地元の友達や学校の恩師が観に来てくれて、皆さんすごく喜んでくれました」

 5公演5キャストという贅沢なプログラムによる東京バレエ団の『くるみ割り人形』。公演を前にした涌田の抱負を最後に聞いた。

 「この時期『くるみ割り人形』を上演するバレエ団は沢山ありますが、そのなかでも東京バレエ団が一番だった、と言って貰えるように私達も頑張ります。劇場でお待ちしています」

(取材・文:渡部晋也 撮影:友澤綾乃)

プロフィール

涌田美紀(わくた・みき)
大阪府出身。4歳よりバレエをはじめる。東京新聞・第67回全国舞踊コンクール、第13回NBA全国バレエコンクール、第25 回ヴァルナ国際バレエコンクールなどの多くのコンクールで受賞歴を誇る。2010年、米国のサンノゼ・バレエ団に入団。その後国内カンパニーを経て2017年11月、東京バレエ団に入団。翌年、NHKバレエの饗宴『ラ・バヤデール』より“影の王国”で東京バレエ団デビュー。以後、数多くの作品で主演するほか、金森穣振付『かぐや姫』、クランコ版『ロミオとジュリエット』などのバレエ団初演作品にも多数出演している。

公演情報

東京バレエ団 くるみ割り人形 全2幕

日:2023年12月21日(木)~24日(日) ※他、地方公演あり
場:東京文化会館 大ホール
料:S席14,000円 A席12,000円 B席9,000円
  ※他、各種席種あり。詳細は団体HPにて
  (全席指定・税込)
HP:https://www.nbs.or.jp/
問:NBSチケットセンター tel.03-3791-8888(平日10:00~16:00/土日祝休)

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