新宿・夏の風物詩が蘇る! 椿組夏の野外劇は、血湧き肉躍る大チャンバラ活劇! 「姓は丹下、名は左膳!」あの名台詞と共に隻眼隻腕のダークヒーローが帰ってくる

 外波山文明率いる椿組の『丹下左膳』。初演は42年前の1981年、八幡山のテント芝居。次は1988年に取り壊し前の吉祥寺ロマン劇場で。この時は山から土を持ち込んで舞台を作ったところ、日を追う毎に乾いてきて土埃がひどかったという。
 そして1992年の3度目で花園神社に初登場、1999年が前回、花園での4度目公演。この時は今回も参加する宮本裕子も出演している。つまり椿組の代表作のひとつとして再演を重ねてきたこの作品が、24年振りに花園神社に戻ってくる。主宰の外波山文明、そしてヒロインを演じる宮本裕子の話を聞いた。

―――『丹下左膳』は昭和の初めに林不忘(はやし・ふぼう)が書いてヒットした新聞小説ですが、椿組の『丹下左膳』は菊池豊さんによる脚本で別物なんですね。

外波山「本家の左膳が亡くなった後の後日譚になっていて、左膳になついていたチョビ安という男の子が、大きくなって左膳を名乗るという話なんです」

―――なぜ今、『丹下左膳』なのでしょう。

外波山「この作品は典型的な差別芝居です。なにしろ主人公の丹下左膳が片目片腕。そして彼の周りに居る河原乞食達は身体に何かしらの障害を持ち、大川端(隅田川の河原)に巣くっている。そんな彼らが自分たちのヒーロー、つまり左膳を創り出して、江戸に殴り込みを掛けようという革命劇でもあります。ヒーロー不在の混沌としたこの今の時代に背景が合っている。庶民のヒーローが求められている時代ですが、我々は声高に政治を叫ぶことはせず、芝居を通して世の中への不満を代弁します。
 そもそも42年前に菊池さんがこの作品を書いたきっかけが、ご自身も足を悪くして杖が欠かせなくなり、そのせいで不具者の気持ちを知ったからだそうですよ」

―――2代目左膳、つまりチョビ安とその長馴染みのお美夜は、前回と同じ山本亨さんと宮本裕子さんでしょうか。

外波山「さすがに24年も経っているので、山本さんには本家の左膳を演じて貰い、チョビ安/左膳は鈴木幸二さんを選びました。宮本さんは同じお美夜ですね」

宮本「たまたま外波山さんに『また丹下左膳みたいなものを演りたいなぁ』と話したら、『丹下左膳、2023年に演るよ』と言われ『え⁈』と。それならば是非にとお願いしました。タイミングがバッチリ合っちゃたんです。いつかリベンジしたいとは思っていました。」

外波山「今回は脚本も演出の西沢さんが少し手を入れています。もともと菊池さんの脚本をまともにやると4時間くらいかかるからねぇ(笑)」

―――宮本さんは早い時期から『ピーターパン』や蜷川作品など、大劇場の演劇に沢山出ていらっしゃいますが、椿組のような野外劇は珍しいですよね。

宮本「ええ、大劇場の作品が多いです。学生時代に下北沢の(ザ・)スズナリに連れて行ってもらって、カルチャーショックを受けたくらい、小劇場とは離れていましたね。
 前回はどんな舞台かも全く知らずにオファーを受けたんですが、現場に行くと楽屋もテントだし、水道も自分でハンドルをつけないと水が出ない。救急車が通ればピーポーと外からの音が聞こえてくる……といろいろ衝撃が大きすぎて、面白がれるところまではいけなくて……衝撃でした。みなさん土とか垢とかの匂いがする芝居をしているのに、私はそういった匂いを出せなかったなと。
 その後もお話を頂いてもタイミングが合わなくて。でもこのままでは外波山さんが死んじゃうと思って(笑)、LINEで聞いてみたんです」

外波山「1999年の時は候補者リストに名前があって、ピーターパン女優だけど当たって砕けろとオファーしたんです。
 野外劇は泥まみれ砂だらけになるし、雨の中でも上演しますから、ハプニングも起きる。あの時も宮本さんが降りてきた縄梯子に乗って見得を切るシーンで、梯子が降りてこないというハプニングがありました。でもその時、とっさにポーズを決めて見得を切った。あれを見ていい根性しているなと思いました」

―――今回の演出構成は西沢栄治さんですね。

外波山「西沢さんとはこれまでも何本か作っていますが、彼は宮本さんの(日芸の)後輩だそうですよ。その頃からスターだったって言っていました」

宮本「(笑)。そんなことないですよ。でも在学中からいろいろ出演していましたからね」

―――主題歌は友川カズキさん。そして今回は挿入歌で山﨑ハコさんが参加していますね。

外波山「友川さんとは30年くらい一緒にやっていました。八幡山での時代は本人も役者で出たりしてね。山崎ハコさんはこのところ一緒にやっていて、また参加したいと言ってくれたんで、お美夜の挿入歌を書いてもらってます」

―――では改めて、再演に向けての抱負を伺います。

宮本「前回ご一緒した方、そして若い世代の新しい出逢いの方と神社でできるのは楽しみです。前回参加の後、海外で公演をしたり撮影をしたり、時代劇とか日本独特の世界観の芝居を別の視点で感じられました。神社でのお芝居、野外劇、これは私の原点回帰です。あれから24年経って、もう一度戻った土の上でどんな化学反応が起きるかを楽しみたい。
 外波山さんの存在は大きいです。あったかいんです。だから子供の心でいられる。そして、戦い、寄り添い、切磋琢磨していい火花を散らしたいです」

外波山「自分達の遊び場は自分たちで作る。これが私のモットーで、花園神社で38年やってきました。一緒に芝居をする仲閒はもう家族みたいなもの。テントを立てて一緒に飯を食い、寝泊まりをして、そこから生まれる暖かさがあると思います。この夏も花園神社にまた殴り込みをかけます。いい夏祭りにしたいですね」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

外波山文明(とばやま・ぶんめい)
長野県出身。椿組主宰。1967年、演劇集団「変身」入団。街頭劇・野外劇を経て、1971年「はみだし劇場」旗揚げ。1986年、新宿・花園神社にて立松和平作『南部義民伝』野外劇を始める。夏の新宿・花園神社野外劇と下北沢の劇場でのプロデュース公演を中心に、他の劇団への客演、映画・テレビドラマ・アニメ声優等、多方面で活躍。その傍ら、新宿ゴールデン街で「クラクラ」を経営。新宿ゴールデン街商店街振興組合理事長も務めている。

宮本裕子(みやもと・ゆうこ)
東京都出身。数多くの舞台・映画・テレビドラマに出演している。舞台作品では『かもめ』、こまつ座公演『兄おとうと』、彩の国シェイクスピア・シリーズ『ヘンリー八世』などに出演。栗山民也、蜷川幸雄、鵜山仁、宮本亜門、サイモン・マクバーニー、吉田鋼太郎など多くの演出家による作品に参加している。1998年、第6回読売演劇大賞 杉村春子賞・優秀女優賞、第34回紀伊國屋演劇賞 受賞。

公演情報

椿組2023年夏・花園神社野外劇
『丹下左膳’23』

日:2023年7月11日(火)~23日(日)
場:新宿花園神社境内特設ステージ
料:小椅子指定席A[背もたれ有り]5,000円
  ベンチ指定席B[背もたれ無し]4,500円
  自由席[整理番号付]4,000円
  ※他、各種割引あり。詳細は団体HPにて
  (税込)
HP:https://tubakigumi.com
問:椿組 tel.080-5464-1350

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