『INDESINENCE』シリーズ前作の前日譚と後日譚を贈る怒濤の連続上演 苦境に立たされる人のために暗躍する“復讐屋=タリオ”達の物語

 俳優として活躍する齋藤貴裕と制作者の吉田千尋による株式会社LUCKUPは、俳優のマネージメントの他、小劇場での舞台や2.5次元舞台の制作などを積極的に行っている。そのLUCKUPによるプロデュース作品『INDESINENCE』は昨年上演の第1作目で好評を得た。そして2023年、その続編を2作連続という形で上演することが決定した。
 それぞれの主役に、俳優としてテレビドラマ『飴色パラドックス』(MBS)、『ワタシってサバサバしてるから』(NHK)や映画『野球部に花束を』などに幅広く活躍する市川知宏と、NMB48のメンバーとしての活躍後、女優・タレントの他、小説を発表するなど多彩さを発揮する三田麻央を迎えるこの2作品。本格的な稽古を前にした今の心境を、齋藤・市川・三田に聞いた。

―――『INDESINENCE』は前回作品を含めたシリーズ作品だそうですが。

齋藤「表の仕事の裏側で、苦境に立たされる人達の為に動く“タリオ”と呼ばれる、6人のメンバーが中心となる話です。今回は前作の後日譚になる『Dry Crimson Thistle』と、前日譚になる『Beautiful Vermilion Ways』の2作品を連続上演します」

―――市川さん・三田さんはそれぞれの作品での主役となりますが、役のキャラクターも含めて、抱負を伺いましょう。

市川「『Dry Crimson Thistle』で僕が演じる東堂瞭は、正義感が強くて直情的、肉体派のキャラクターです。同じくタリオのメンバーで、優秀な弁護士でもある兄・東堂明解に対するコンプレックスを抱えながら奮闘する役どころです。
 僕自身にも兄が居ますが結構仲が良くて。リスペクトはありますが、コンプレックスはあまり無いですね。東堂兄弟もそれほど仲が険悪というわけではないようです。なにしろ同じタリオのメンバーとして動いているくらいですから。少なからず敬意はある。ただ、お兄ちゃんの手前、自分を認めてもらいたいという気持ちを秘めている。自分の経験的にも瞭というキャラクターは感情移入はし易そうだなと感じています」

三田「私は『Beautiful Vermilion Ways』で南上宮陽子というキャラクターを演じます。陽子ちゃんも同じく肉体派で、復讐のために生きているようなところがありますね。
 護身術の名手ということですが、色々な事情で無理矢理大人に、そして強くならなくてはいけなかったわけです。そして心で動くというか、直感で動けるタイプで。そういった部分には好印象があります。私も直感型で、深く考えれば考えるほど空回りしちゃいます(笑)。役者としてはまだまだ未熟なので、皆さんに支えていただきながらキャラクターを育てていきたいです」

―――齋藤さんは両作品で北社暗示という一役ですね。

齋藤「さっき話に出ました市川さんが演じる瞭の兄・明解の片腕のような存在です。東堂明解がタリオのリーダーとして頭脳で、僕が行動で動かしていきます」

―――それにしても2作品連続上演とは思い切りました。踏み切った理由を教えてください。

齋藤「前回は遺産相続の話だったのですが、今回はタリオのメンバーにスポットを当ててみました。その時に前作を活かしつつ、その前後を作る方が面白いかと思って、この形にしました。
 でも2作連続と言っても、1つのストーリーの中で進んでいますから。また作品によって同じ役でもキャストが変わったりするので、それはその分楽しみも増えるのかなと思います」

―――オリジナルストーリーは、疾駆猿を主宰する佐藤信也さんによるものですが、世界観についてはどうでしょう。

齋藤「世界観については私とプロデューサーの吉田との3人で話し合いながら練り上げました。この話をシリーズ化する最初の企画として、小説に出来るような作品を創ろうというコンセプトがありました。それで前回は会話劇になりましたが、今回は小説的だけど、観ても楽しめるようにとおもって、パワフルな部分も盛り込んでいます。“男は強いけど弱いもので、女は弱いけど強いもの”といった辺りを、市川さんの瞭や三田さんの陽子を通してどう見せられるかですね」

―――時代背景は若者のパワーが強かった1970年代ですね。

齋藤「特に70年代を描きたいといった狙いではないですが、作品の要素にある閉ざされた空間を表現するためにこの時代を選びました。この時代はまだ携帯電話がないので、閉ざされた空間が作りやすい。そして人間が特に一生懸命になっていた時代だと思うんです」

市川「学生運動の映像を見たことはあって、僕にとっては歴史上の出来事として知っている世界です」

三田「全く縁遠いです。YouTubeの世界ですね」

―――そりゃそうですよ(笑)。ところでそれぞれの主役を市川さん、三田さんにと思われた理由を教えてください。

齋藤「キャスティングについてはそれに強い方のお力を借りたのですが、こちらの熱い想いを受けてくれました。まず企画書を読んですぐにピンときたという市川さんを推薦いただいたのですが、それがぴったりはまったんです。三田さんについてもほぼ同じです。どちらも作品のメインを任せられると思いました」

市川「ちょっとプレッシャーですね(笑)。でもそう言っていただいたからには期待以上のものを見せたいと思います。瞭のキャラクターは探っている最中ですが、糸口はたくさんあるなと思います」

三田「私もまだまだ模索中ですが、稽古の間でしっかり創り上げていきたいです」

齋藤「おふたりとも、人間の弱い部分、汚い部分をどう魅せるか。ハードルを越えようとするときの顔つきや音圧がどう伝わるか。それが楽しみです」

―――最後にそれぞれからのメッセージをお願いします。

市川「今回2作品を通して、1つは主演、もう1つはメインキャストとして東堂瞭役を演じさせていただきます。どちらも登場人物の葛藤や事件に至る想いが魅力的だと感じています。6人いるタリオのメンバーの行動も、それぞれキャラクターの魅力が出ていますから、是非両方観て欲しいです。
 今回は初めて共演する方も多いので、そこから生まれる化学反応があると思います。座長として引っ張っていこうと気合いが入っていますので是非期待して下さい」

三田「これほどストレートなミステリー作品は初めてです。これまでもストレートプレイは多かったですが、小説を読んでいるかのような言い回しや作風はとても魅力的ですね。普段小説に縁遠い方でも楽しんでいただけると思います。
 さらに陽子がどんな肉体派キャラクターを魅せるのか、ミステリーとしてどのように事件が生まれるのか。色々な要素が組み合わさっているので、そんな面白さも楽しみにして頂きたいです」

齋藤「個人的には作品を軸にしてお客様が本番前のワクワク感、本番を観ての感動や衝撃、観劇後にお友達と語り合うなど、観劇前から後までを通して楽しめる作品になりますし、このおふたりと話してそれを実感しています。そして舞台から始まって小説やアニメなど、大きく育つよう無謀かも知れないけれど突っ走っていきたいです」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

齋藤貴裕(さいとう・たかひろ)
福島県出身。小劇場を中心に俳優として活動を展開。その活動を通して、プロデュース公演の企画・製作し、これまで繋がってきた沢山の演者やスタッフが活躍できる場所の提供することを目的とし、広くエンターテイメントを発信する活動の場として株式会社LUCKUPを立ち上げる。

市川知宏(いちかわ・ともひろ)
東京都出身。2008年、第21回「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリ受賞。2010年にはテレビドラマ『クローン ベイビー』で初主演。近年は、TBS日曜劇場『オールドルーキー』、映画『野球部に花束を』などに出演。現在、MBSドラマ『飴色パラドックス』が放送中。

三田麻央(みた・まお)
大阪府出身。2011年にNMB48 2期生として加入。2019年に同グループを卒業後、女優・声優・タレントとして活動を開始。五反田タイガー 9th Stage『DEMON~ありがとうって言えなくて~』や舞台『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』、オーディオドラマ『“自称”超能力少女・三船ユリ』などに出演。2021年にはライトノベル『夢にみるのは、きみの夢』で小説家デビューを果たすなど、マルチに活動中。

公演情報

INDESINENCE Case:Dry Crimson Thistle / Case :Beautiful Vermilion Ways

日:【Case:Dry】
    2023年2月15日(水)~19日(日)
  【Case:Beautiful】
    2023年2月22日(水)~26日(日)
場:新宿村LIVE 
料:7,500円(全席指定・税込)
HP:https://luckup.co.jp
問:LUCKUP mail:contact@luckup.co.jp

インタビューカテゴリの最新記事