プリエールの人気シリーズ『世襲戦隊カゾクマン』3部作連続上演！　世襲で働く戦隊ヒーロー。彼らの奮闘から見えてくるものとは――

　世の愛と平和を守るため、悪と闘う佐久間家の人々。彼らは代々世襲制で働くヒーローで、「カゾクマン」として国民から親しまれていた――。創立20周年を記念し、プリエールが『世襲戦隊カゾクマン』を連続上演。2014年に第1弾、2017年に第2弾、2019年に第3弾と上演を続けてきた人気シリーズが、今回は回替わりで全3部作の上演を行う。
　婿グリーン役を演じる小浦一優（芋洗坂係長）、宿敵の怪人ミドラー役を演じる西山水木ら第1弾からの続投メンバーに加え、本シリーズ初参加で怪人イーゲン役を演じる鈴木裕樹が新規キャストとして登場。11月に迫った公演に向け、プリエールの有本佳子プロデューサーと3名の主要キャストに話を聞いた。

―――2014年に誕生したプリエールの人気シリーズ『世襲戦隊カゾクマン』。シリーズ発端のきっかけと、その反響をお聞かせください。

有本「娘がまだ小さかった頃、戦隊ものを食い入るように観ている姿を見て、何がそんなに楽しいんだろうと疑問に感じたことがあって。ピンチに陥った人のもとにヒーローが現れ敵をやっつける。戦隊もののお約束ではあるけれど、ドキドキハラハラしつつもどこか安心感を持って楽しめる、そんな自分の子供に見せたいと思える作品を作れたら、と考えたのがそもそもの始まりでした」

西山「当時の反響は凄かったですね。これはまごうことなき私の代表作でありキャラクターです。ちょっと間が抜けているところとか、ミドラーって私自身ととても似てるところがあって（笑）。またこのシリーズはキャストの仲が本当に良いんですよね。舞台上で私は敵役ではあるけど、仲良く戦っている感じでした（笑）」

小浦「当初から本当に笑いの絶えない稽古場でしたね。お互い目が合うと吹き出しちゃうみたいなことも多くて、役者が板の上でこんなに笑っちゃダメだろっていうくらい（笑）。毛色の全く違う役者があちこちから集まって、色々勉強にもなりました」

有本「鈴木さんは今回初出演ですけど、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』に主演されていて、実は一番本物の戦隊ヒーローなんですよね。プロフィールを拝見して、“これは面白い！”と思って（笑）」

鈴木「初参加ということで最初は不安もありましたけど、皆さん温かく迎えてくださって、本当に素敵なカンパニーだなと感じました。悪役を演じるのは初めてです。ただイーゲンは単なる悪役ではなく、色々な要素が詰まっていて、新しいチャレンジだと思ってワクワクしています」

―――今回はシリーズ3作品を回替わりで上演します。役者にとってかなり挑戦的な試みになるのでは？

有本「20周年ということで、何か記憶に残るものをやりたいという想いがまずありました。本来はパート1を何回か上演して、しばらく準備期間を設けてからパート2を何回か上演して、という方が役者さんにとってやりやすいというのはわかってはいたけれど……。お客様に楽しんでいただくためにも、できれば1→2→3→1…と繰り替えし上演したい。作・演出の田村孝裕さんに相談したら、『僕は大丈夫ですよ』と言われて（笑）」

小浦「役者は大丈夫じゃないです、本当に不安しかないですね（笑）。僕はどちらかというと心配なのは体力の方。踊りやアクションもいっぱいあるので」

西山「同じセットで、シチュエーションも、衣装も同じ。ごっちゃにならないか凄く心配で。役者同士、皆で助け合おうねと言ってます（笑）」

鈴木「映像を観ていて、アクションが多いなというのは凄く感じました。僕もアクションは経験してはいるけれど、また鍛え直さなきゃと思っています」

西山「昔のビデオを観るとやっぱりみんな凄く若い（笑）。私も体を鍛えなきゃと思ってスクワットをしていたら、膝を痛めてしまって。情けなかったですね。いかに歳を重ねているか、ミドラーという役を通して自分との出会い直しをしています」

小浦「本当にそうですね（笑）。今の目標は、前回を上回ること。歳を重ねた分、それくらいの気持ちがあってちょっと前回に追いつけるくらいかなと思って。でも役としては、時間が経ってもさほど違和感はない感じ。このメンバーが集まったら、自然と自分のキャラクターに戻れそうな気がします」

―――コメディ作品ならではの難しさを感じる部分はありますか？

西山「田村さんの笑いのセンスにちゃんとついていけるかな、という気持ちはありますね。稽古場で一番笑っているのが田村さん（笑）。『ギャグが渋滞したので少しカットします』という名言が出たこともあるくらい。でも単にギャグで終わらないのが田村さんの凄いところで、人間に対する観察力の深さを感じます」

有本「ヒーローものではあるけれど、私たちが描きたいのはあくまでも家庭劇であり家族の話。ヒーローだって皆悩みを抱えてる。それを本当に真面目にやってるから笑えるというだけなんですよね」

小浦「カゾクマンとして頑張ってはいるけれど、同時にヒーローの抱える重さみたいなものもある。笑いの部分と表現の部分のメリハリをつけることで、人間性や背負っているものが現れてくればと。家庭劇の深い部分を追求しながらコメディとしていかに成立させるか、そこが重要なところだと考えています」

鈴木「僕はこれまで現代劇でセンシティブなお芝居が多かったけど、コメディにずっと挑戦したいと思っていたので、今回こうして参加できて本当に嬉しいですね。でも笑わせるって大変なことだし、そのための技術というものも必要になってくる。例えばズッコケる表現一つにしても、下手だとやっぱり笑ってもらえないじゃないですか。単純にお客様に笑っていただけるようなお芝居ができるようになれたら、という気持ちがあります」

西山「キャラクターとしては、これまでのヒーローと違って格好悪いところもいっぱいありますよね（笑）」

鈴木「でもファンの方はたぶん僕のやりたいことというのを感じてくださっていると思う。それに『鈴木くんってこういうこともできるのね』って言われるような演技ができたら格好良いなと思うし、そうなりたいなと思っていて。僕もそろそろ40代になりますけど、ここのところ年齢的にも色々な役をいただけるようになってきて、自分の中でも大きなステップとして捉えている部分があります。ただ気を抜いたら自分も皆さんの芝居を見て楽しくなっちゃうかもしれない。油断して笑っちゃったらどうしよう、という心配はありますね（笑）」

―――どんな舞台をお見せしたいですか？　本作に臨む心境をお聞かせください。

鈴木「笑えて泣ける素敵な作品で、僕もこうして参加できて本当に光栄に思っています。だからこそ僕が参加するその意味を探していかなければと考えています」

小浦「お客様が自分自身をこの作品に投影していただくことで、当たり前に思っていたものの大切さがまた見えてきて、“やっぱり家族っていいな”と思ってもらえたらという気持ちがまずあります。あと役者皆が全力で舞台に挑み、そこで奮闘したり、ときに失敗している姿をお見せすることで、単純に皆さんも頑張りましょうという想いが伝われば嬉しいですね」

西山「そうなんですよね。皆、本番当日もギリギリまで稽古をしていて、納得のレベルがとにかく高い。私もここにちゃんと居続けられるようにしなければ、こういう厳しさを持ち続けなければという想いでいます」

有本「パート1に来てくださったお客様がパート2でお友達を誘って来てくださったり、パート3で子供が成長したのでと一緒に連れて来てくださったり――。作品が育っていく喜びをシリーズを通して肌で感じてきました。今回も“あれをまたやるんだ！”、“全部観に行きたい！”といった声をいただいていて、本当に嬉しいですね。この作品は私の誇りです。20年分の感謝を込めて取り組みますので、ぜひまた沢山の方に観に来ていただけたらと思っています」

（取材・文：小野寺悦子　撮影：友澤綾乃）

プロフィール

公演情報