「最初で最後の」スペシャルなライブイベント 2000年~ 2010年の仮面ライダー主題歌をカバーするLive Show!

 舞台、映像に俳優として、演出家としても広く活躍している井上正大が、自身の出世作でもある「仮面ライダーディケイド」にちなみ、2000年~2010年に製作された歴代「仮面ライダー」の主題歌をカバーするLive Show Masahiro Inoue presents Special Live Show 2022『My journey through the decade』が6月4日~5日、東京北千住のTheater1010で開催される。舞台の製作総指揮、映像演出も行うなど多彩な才能を発揮している井上が、一個人として立つ「おそらく最初で最後の」というスペシャルなライブイベントだ。
 そんなステージに向かう井上が、今回のLive Showへの思い、仮面ライダーディケイドの存在、更にコロナ禍で様々な制約のあるいまの時代にライブ業界に託す願いを語ってくれた。


歴代の仮面ライダーに変身して主題歌を歌うのは面白いんじゃないか

────今回のLive Showのコンセプトについて、いまお話いただける範囲でまず教えてくださいますか?

「いまコロナ禍の影響で色々なイベントや舞台が中止を余儀なくされていますが、その中のひとつに仮面ライダーのイベントがあって、Live Showをやる予定がなくなってしまっていたんです。また、それとは別に僕がずっとやっている銀岩塩という舞台チームでの公演も今年やる予定でいたのですが、やはりできなくなってしまって。ただ、その銀岩塩の公演の為にTheater1010を借りていましたから、せっかく劇場を押さえていたわけだし、このコロナ禍のなかでも何か少人数でできることがないだろうかと考えていって、じゃあLive Showをやらせていただこうか?という流れから生まれた企画です。と言うのも、僕のなかでやりたいことがあったんです。以前に平成仮面ライダーの主題歌を各アーティストさんが歌う「平成仮面ライダー10年祭」というイベントがあったのですが、当時僕が仮面ライダーをやっていたので、そこでトリを務めさせていただいて、劇中の挿入歌を歌わせてもらったんですね。それがすごく良かったなという思い出がありましたし、僕が演じた「仮面ライダーディケイド」は平成のどの仮面ライダーにも変身できるという設定だったので、2000年の「仮面ライダークウガ」から「アギト」「龍騎」「555」「剣」「響鬼」「カブト」「電王」「キバ」「ディケイド」までの10年間の……」

────さすがです!スラッと歴代仮面ライダーのお名前が!

「言えるようになっています(笑)。その10年間の仮面ライダー全部に変身して、主題歌を歌うというのは面白いんじゃないか?と思いました。それぞれの主題歌のテイストが全く違っていてとても難しいですし、僕自身職業が歌手ではありませんから大変なんですが、オマージュ的な意味を込めて楽しんでいただけたらいいなと思っています。」

────いまおっしゃったように、コロナ禍でできなくなってしまう舞台やイベントをはじめ、日常生活でも我慢しなければならないことが何かと多いなかで、そういう特別感のあるLive Showは素敵ですね。

「僕が銀岩塩をやり始めたのも、舞台って色々な制限をどうしても受けるので、演出面などで出来る限り制限されない舞台を作りたい!と思ったのがきっかけだったのですが、ライブイベントもやはりいまは特にたくさんの制限がかかるので、一個人として、できる限り自由奔放なLive Showを創りたいなと思っています。まぁ、僕をネタにして楽しんでください!(笑)という気持ちですね。」

仮面ライダーと歩んだ10年間の旅路の同窓会のような気持ち

────銀岩塩の活動をはじめ、多岐に渡るご活躍をされている井上さんですが、改めて「仮面ライダーディケイド」は井上さんにとってどんな存在ですか?

「平成仮面ライダーシリーズ10周年と平成仮面ライダーシリーズ10作記念という位置づけの作品で、はじめは半年間というお話だったのですが、その後もずっと出続けることになって。2021年に配信と、Blu-rayで出た『仮面ライダーディケイド VS ジオウ/ディケイド館のデス・ゲーム』という作品をやらせていただいた時に、一応僕が死ぬ表現みたいなものがあったので、これで門矢士(※かどや・つかさ=仮面ライダーディケイドに変身する青年)としての旅が終わったのかなと思っていて。それも今回のLive Showの発想につながっているんです。ある意味僕のなかでは同窓会のような気持ちもあるので。Liveのタイトル『My journey through the decade』はGACKTさんが歌ってくださった仮面ライダーディケイドの主題歌「Journey through the Decade」から来ていて、10年間の旅路という意味なので、僕も仮面ライダーと歩んだ10年間の旅路をまとめた感じにしようかなと思ってつけさせてもらいました。いまGACKTさんが活動を休止されているので、今回「ライブイベントで歌っていいですか?」とお訊きしたら「好きにやってくれ」と言ってくださったので、GACKTさんの歌も歌わせていただくので。

────それはいま寂しい思いで活動再開を待たれているGACKTさんのファンの方々にも嬉しいことですね。

「そうだったらいいなと思います。先日買い物をしていたらGACKTさんのファンだという方から声をかけられて、とても寂しそうだったので『元気そうですよ』とお伝えさせていただいたりもしていますし、今回Liveをやろうと思ったものの、僕は舞台に関わる俳優さんやダンサーさんにはたくさん知り合いがいるのですが、Liveに携わる人達をあまり知らなくて。それでGACKTさんにお願いして紹介していただいたので、ギタリストのYOUさんやドラマ―のばるさんなど、GACKT jobのバンドメンバーの方達が周りを固めてくださることになりましたから、僕としてもとても頼もしいです。やっぱり仮面ライダーを愛してくださる方々は本当に多いし、井上正大個人をという以上に、仮面ライダーディケイドの僕が好きで、ずっと応援してくださっていて、仮面ライダー関係のものに出演するととても喜んでくださる方達がたくさんいらっしゃるので、さっきも言いましたように門矢士としての旅が終わったところで、仮面ライダーディケイドを愛してくださった方達に向けて何かできないかな?という思いも強くあります。おそらく最初で最後のイベントになりますが、色々な方々に楽しんでいただけたらいいなと思っています。」

演出を経験して広がっていった

────銀岩塩の舞台も「FUSIONICAL STAGE」とクレジットされた大変独創的なものですが、そういう舞台作品と今回のようなLive Showとでは違いはありますか?

「舞台は全体を通した演出がありますが、Liveは音楽と音楽の間は基本フリートークなので、より「生」に近いんじゃないかと思います。それはどちらかと言うと僕の得意とすることではないですし(笑)Theater1010での公演だということもあって、今回ディケイドが歴代のライダーに変身するという、ちょっと舞台作品に寄せたコンセプトを考えたという部分もありますね。それを通して全部カバーしてやるぜ!(笑)という感覚です。」

────その「仮面ライダー」は映像作品ですが、こうした生の舞台の表現と映像作品での表現に役者さんとして違いを感じますか?

「舞台表現で大きいのは、常に正面から見られることに対して意識していなければいけないということですね。例えば裏でどんなに違う顔を見せたとしても、お客様には見えないですし、遠くの席のお客様にも届けようとするとボディランゲージじゃないと届かないということもあります。でも映像はカメラが切り取りってくれるので、例えば瞼がピクっと動くだけでも表現になるし、伝わりますよね。そういった表現の大胆さと繊細さの違いかなというふうに、僕のなかでは感じています。どちらが良いということではなく、どちらにも良さがあるし、大変さもあります。このコロナ禍で舞台は中止になってしまうので、ハッキリ影響が見えると思うのですが、じゃあ映像がコロナの影響を受けていないか?というと、決してそんなことはなくて、収録が一日延期になれば膨大な費用が嵩むし、関わる人数も多いのでどちらも本当に大変です。そのなかで、なんとかして作品を届けていくということを、みんなでやっていっているので、どちらもとても大切です。」

────井上さんは舞台作品では演出も多くてがけられていますが、それによって現場での気持ちに変化などはありますか?

「自分で変わったなと思うところは、以前は監督や演出家が何を欲っしているのかは分かっていない状態の中で、まず自分が役になりきって、そこから監督や演出家に引き出してもらおうとしていたなと。でも色々な演出方法を勉強していくと、監督や演出家が欲しいものが役者の側からも分かるようになるんですよ。「このカットはこう狙っているんだろうな、だとするとこういう芝居をすればいいな」というものが出てきたり、「この場面はこう動いて欲しいんだろうな」が見えてきて「その為にはこういう気持ちで行けばいいか」というような、逆算から自分の演技が決まっていくところもあります。それは演出をやっていったなかで生まれてきた感覚ですね。もうひとつは、例えば「このシーンで自分が動いたらこう切り取って欲しいな」とか「こういう絵にして欲しい」という感覚が生まれてくるようになったので、「こうしてくださると嬉しいんですが」みたいなことは言わせていただくようになりました。監督や演出家にちょっとした挑戦と言いますか(笑)、そういう発信をさせていただくのは、いま好きでよくやっています。

────やはりそれは、全体像を見る作業から視野が広がられた?

「そうですね。視野が広がることが一概にいいのかというと、それもちょっとわからないところもあるのですが、僕はどちらかというと色々な仕事をする機会が多いので、自然に広がっていったのかなと思います。逆にある意味1点集中で、演じることだけに注力していく方がいらしても、もちろんそれはそれですごくいいと思うので、タイプの違いということだと思いますが、僕はそうなのかなと思っています。」

生のエンターティメントに元気を取り戻して欲しい

────そうしたなかで、コロナも未だ収束したとは残念ながら言い難い時点ではありますが、今後、展開していきたいことはどうですか?

「舞台をやりたいです。今年はできなくて、来年もどうなっているかまだわかりませんが、生のエンターティメントに元気を取り戻して欲しいと願っています。生のエンターティメントってコロナが来る前はなくなるなんて思ってもいませんでしたが、やっぱりいま、ライブ産業全体が大変な危機ですよね。それがある意味当たり前というか、なくてもいいものには絶対にしたくないんです。必ずライブ産業を再浮上させたい。そして、国と国との関係って刻刻と情勢が変わるので、今回実現できるか、次の機会になるか、もっと先になるかはわかりませんが、海外に向けて配信もしていきたいんです。国内で生のライブでお互いに感じ合ったものが、遠く離れた海外でもライブ配信でつながれる。そういうシステムを構築していきたいなと。その辺りに関してはいまも動いているので、必ずやっていきたいです。」

────文化が国境を越えていくのは本当に素晴らしいことだと思いますし、一日も早く良い状況に向かって欲しいですが、そんななかで今回は特別なライブが拝見できるということですので、是非楽しみにされている方達にメッセージをお願いします。

「色々と真面目な思いと、自分のなかではネタ的な(笑)気持ちもあって作るLive Showですが、仮面ライダーの歴代の主題歌を歌っている方々は、女性も男性も皆さん大変すごいアーティストの方々なので、実際には10年分をカバーするというのは至難の業だなという現実もあります。果たして自分が全てを歌い切れるのか?という大きな挑戦でもありますが、やると決めたからには頑張りたいなと思っているので、二日間しかありませんが、どんなに楽しいイベントなのか、そうではないのか(笑)を、是非確かめにきていただきたいです。今回完全に僕一人に責任がかかっているLiveなので、「楽しかったな!」と思っていただけたとしたらありがたいですが「人が集まらなかったな」だったとしても、全部僕のせいなので(爆笑)、大変ですがそれもまた面白いかなと思っています。Theater1010の、普段あまりLive Showを多くやってはいない「劇場」という空間で、全力でお送りするLiveなので、是非足を運んでいただけたら嬉しいです!」

(取材・文&撮影:橘 涼香)

プロフィール

井上正大(いのうえ・まさひろ) 
1989年3月20日生まれ、神奈川県出身。2008年、ミュージカル『テニスの王子様』で俳優デビュー。2009年から平成仮面ライダーシリーズ第10作記念作品『仮面ライダーディケイド』の主人公・門矢士/仮面ライダーディケイド役を演じ、一躍高い人気を得る。出演作に、映画『牙狼〈GARO〉 神ノ牙-KAMINOKIBA-』、『RYOMA 空白の三か月』、ひかりTVオリジナルドラマ『グッドモーニング、眠れる獅子』、銀岩塩vol.4.5 FUSIONICAL STAGE『ABSO-METAL-黎明-』、舞台『ROAD59 -新時代任侠特区-』など。舞台の製作総指揮、映像演出も行うなど多彩な才能を発揮して活躍中。

公演情報

Masahiro Inoue Presents Special Live Show 2022 ~My journey through the decade~

日:2022年6月4日(土)18:30開演・5日(日)17:30開演 ※開場は開演の1時間前
場:シアター1010
料:8,800円(全席指定・税込)
HP:http://www.ginganen.com/
問:style office mail:stage.contact55@gmail.com

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